【困っタコラム 第3話】こうなったのは誰のせい

資料集

こんにちは。
また“困っタコラム”でお会いできて嬉しいです。

前回は、友達からアイスを食べに行こうと誘われた、ゆいちゃんのお話でした。
自宅の鏡の前で悩む様子から、ボディイメージの障がいについてご紹介しました。
【第1話 】困っタコって、何者?!
【第2話】痩せているのに太って見える?

今回は、家庭での食事についてお届けします。

それでは、第3話です。どうぞ!


こうなったのは誰のせい?

――― 自宅で夕飯を囲んで ―――

お母さん
お母さん

ゆい、また夕飯ほどんど手をつけてないね。
いったいどうしたの?最近、ずっとこんな感じじゃない。

ゆい
ゆい

ちょっと、お腹空いてないだけ。
そんなに騒ぐこと?

お母さん
お母さん

騒ぐわよ。あなた、顔色も良くないし、先生も「痩せすぎてる」って心配してたでしょ。
どうしてそこまで食べたがらないの?

ゆい
ゆい

そんなの私の勝手じゃん。
そもそも太ったら部活もきつくなるし、見た目だって・・・

お母さん
お母さん

見た目?ゆい、もう十分痩せてるのに?それ以上痩せたら危険よ!

ゆい
ゆい

だから、私の体のことなんだから私が決めるって言ってるの!
いちいち口出ししないでよ。

お母さん
お母さん

だって、あなたの様子を見てたら心配になるでしょう?
最近、元気もなくて。私はあなたが大事だから言ってるのに。

ゆい
ゆい

そうやってなんでも「あなたのため」って言うけど、本当はお母さんが恥ずかしいだけでしょ?
「痩せすぎの娘を持つ母親」にみられるのが嫌なんじゃないの?

お母さん
お母さん

そんなわけないでしょう!
どうしてわかってくれないの、ゆい・・・

ゆい
ゆい

もういい。ごちそうさま。

――― ゆいは自分の部屋へ行ってしまいました ―――

お母さん
お母さん

はぁ・・・

コーディネーター
コーディネーター

こんにちは!

お話を伺います。

お母さん
お母さん

あ!先日お話したコーディネーターさん!

実はまたゆいとケンカになってしまって・・・
どうしても食べてくれないし、私も感情的になってしまうんです。

コーディネーター
コーディネーター

お母さまもお疲れですね。

ゆいさんも辛いでしょうし、ぶつかってしまうのも無理ありません。

お母さん
お母さん

私も理屈ではわかってるつもりなんですが、いざ目の前で食べない子どもを見ると、どうしても「あなたが悪い」と思ってしまうんです。

コーディネーター
コーディネーター

親御さんがそう感じるのも当然ですよ。

ゆいさん自身も「食べたら太る」という恐怖や不安が強いかもしれません。

これは誰か一人のせいではなく、病気そのものが原因と考えてみると、少し気持ちが楽になることがあります。

ご本人も相談することができますよ。

お母さん
お母さん

わかりました。私からもゆいに声をかけてみます。

――― 数日後 ―――

コーディネーター
コーディネーター

お時間を作ってくださってありがとうございます。

ゆいさん、最近お食事がうまくいかず、お母さんともぶつかってしまうと聞きました。

ゆい
ゆい

別に・・・、私が食べたくないだけなのに、お母さんが騒ぐから。

放っておいてほしいんです。太ったら嫌だし、部活にも支障が出るし・・・

お母さん
お母さん

私だって放っておきたいわけじゃないのよ。でも心配で・・・

どうしてこんなに頑ななのか、わたしにはよくわからなくて。

コーディネーター
コーディネーター

どちらも自分の気持ちをわかってほしい、という思いから衝突しているようですね。
ここで提案なんですが、“困っタコ”を知っていますか?

ゆい
ゆい

あのタコの話ですよね? 本当にそんなのでどうにかなるのかな・・・

コーディネーター
コーディネーター

もちろん困っタコが実際に見えるわけではありません。
ただ、今の状態はゆいさんでもお母さんでもなく、病気よるもの——つまり、困っタコの仕業かもしれない、と考えてみるんです。
ゆいさんが「自分は太っている」と強く信じ込んでしまうのも、そのせいかもしれません。

お母さん
お母さん

つまり、ゆいが悪いわけじゃなくて、ゆいの中にいる困っタコがそうさせている、と捉えるんですね?

コーディネーター
コーディネーター

そうです。そう考えると、「どうしてわかってくれないの!」と本人を責めたり、「私が悪いんだ」と自分を責めたりせずに済みますよね。
もし「困っタコがまた出てきたかも」と気づければ、「どう対処しようか」と考えやすくなるんです。

ゆい
ゆい

・・・うん、確かに、自分でも「何でこんなに食べたくないんだろう」って思うときがあって。
でも、やっぱり怖いんです。食べたら太るんじゃないかって。

コーディネーター
コーディネーター

その「怖い」気持ちが強いのは、まさしく困っタコが働きかけているのかもしれません。
これからは、自分と困っタコを切り離して見てみる、という意識を少しずつ持ってみませんか?

お母さん
お母さん

ゆい、私もついあなたを責めちゃって、ごめんね。

これからは困っタコを二人で追い出すつもりで頑張りたいわ。

ゆい
ゆい

・・・うん、ちょっとやってみる。


第3話、いかがでしたか?

家庭での食事は、親子ともに大切にしている時間だからこそ、ぶつかり合いが起こりやすい場面です。
しかし、今回のように「どうしてわかってくれないの?」と衝突してしまうのは、誰か一人の責任ではないかもしれません。

困っタコ、つまり「病気そのもの」が二人を苦しめていると捉えることで、当事者も周囲も「罪悪感」や「相手を責める気持ち」から少し解放されるかもしれません。
これが外在化がいざいかの考え方です。

次回は、学校での部活場面について取り上げたいと思います。

お楽しみに。
またお会いしましょう。