こんにちは。
初めての方も、おなじみの方も、読んでくださってありがとうございます。
“困っタコラム”始まります。
前回は、受診当日の朝に「やっぱり行かない!」と部屋にこもってしまったゆいちゃんと、本人が困っている身体のつらさに寄り添うことで受診に誘うご家族の様子をお届けしました。
【第6話】行きたい、でも行けない・・・~揺れ動く心と受診の壁~
【第5話】食べることは栄養補給だけじゃない~摂食障がいの回復とは~
【第4話】運動がやめられない?!~頑張りすぎの正体~
【第3話】こうなったのは誰のせい
【第2話】痩せているのに太って見える?
【第1話】困っタコって、何者?!
今回は、毛布をギュッと握りしめていたゆいちゃんの「心の中」に迫ります。
それでは、第7話です。どうぞ!
病気を手放すのは怖い~私を守る“困っタコ”との葛藤~
――― 病院へ行く約束の日の朝。ゆいは自室のベッドで毛布を握りしめていました ―――

お父さんもお母さんも、私のために言ってくれてるのはわかってる。
保健室の先生や顧問の先生が心配してくれてるのも、ちゃんとわかってる。

大好きなバスケにも行けなくなって、友達とも遊べない。
本当はお父さんのカレーもおいしく食べたいし、今の自分が普通じゃないことも、本当はわかってる。すごくつらい・・・

でも病院に行ったら、体重を増やされて、この “困っタコ” を手放さなきゃいけないんでしょ?絶対に嫌だ。だって、 困っタコは私を守ってくれてたんだもん。
――― (回想)ゆいの心の中で、これまでの日々がよぎります ―――

部活でうまく結果が出せなくて、自分に全然自信が持てなかったとき・・・

でも、体重計の数字だけは絶対に嘘をつかなかったでしょ?
食べるのを我慢して、限界まで走れば確実に減っていく。
あなたにとって、それが唯一の「達成感」だったよね!

うん・・・。数字が減っていくことだけが、私が自分の人生をコントロールできているっていう証だった。

周りだって「ストイックですごいね」「細くてうらやましい」って褒めてくれたよね?
私の言う通りに痩せていれば、あなたにはちゃんと価値があるんだよ!
カロリーの計算や運動のメニューを考えていれば、プレッシャーや不安だって忘れられたでしょ?

そうだよ。痩せていることで安心できたの。
見えない不安に押しつぶされそうな夜も、数字のことだけを考えていれば、心が少しだけ静かになったから。

だから、病院なんて行く必要ないよ!
私を手放して普通の体型に戻ったら、あなたには何が残るの?
あの「自信がなくて、価値のないタダの自分」に戻っちゃうよ? それでもいいの?

それは、たまらなく怖い。
せっかく手に入れた「特別な自分」が消えてしまうくらいなら、このまま苦しい方がまだマシなのかな・・・。

そう、私と一緒にいればいい。そのためには絶対休んじゃダメだよ!
少しでも体重が増えるのは怖いことでしょ? もっと私のルールを守って!

でも・・・気づいたら、そのルールからどうしても抜け出せなくなってた。
休むと罪悪感で押しつぶされそうになるし、毎日すごく怖い。
ねぇ・・・私、本当はもう、すごく疲れたよ・・・。
――― (回想)相談窓口にて。コーディネーターが以前、ご家族に語っていた言葉 ―――

お父さま、お母さま。摂食障がいの症状は、決してご本人の「わがまま」ではありません。
実は、ご本人にとって病気(困っタコ)が、つらい現実から自分を守る盾のようになっていたり、不安な心を支える杖代わりになっていることがあるんです。

病気が、ゆいを守っている・・・?!

はい。「痩せること」で得られる達成感や安心感が、今のゆいさんの心の支えになっているのです。
だからこそ、頭では「大人の言う通りだ、治さなきゃ」「このままじゃ辛い」とわかっていても、いざその盾や杖を手放すとなると「自分が壊れてしまうのではないか」と激しく葛藤することがあるんですよ。


ご本人にとって、困っタコを手放すことは、自分の一部を失うような強烈な恐怖なんです。

・・・まさに身を切られるような思いなんですね。
――― 再び、ゆいの部屋の前 ―――

ゆい。病院に行くのが怖い気持ちは、あって当然だと思うよ。
今日、無理に全部を変えようとしなくていいんだよ。

ゆいにとって、痩せることがすごく大事なことだったんだよね。
それを手放すのが怖い気持ち、お母さんたちも少しずつわかってきたよ。

怖い。太りたくない。まだ、このやり方を手放したくないの。
でも、もう、こんなに体がだるいのも、バスケができないのも、みんなと笑えないのも・・・つらいの。
でも、休めないの。

うん。「手放したくない」って気持ちも、「でも、でも、でも・・・」って気持ちも、全部ひっくるめて、一緒にお医者さんに持っていこう。
今日は、だるさや寒気がして、体がつらいことだけ話しに行くんだ。
お父さんとお母さんもずっと側にいるから。

・・・全部ひっくるめて、持っていく・・・
――― ゆいはゆっくりと毛布から手を離し、立ち上がりました ―――

わかった。
怖いけど、このまま何もできなくなるのも嫌だ。
・・・行ってみる。
第7話、いかがでしたか?
「治したい、でも手放すのが怖い」。 大人の言葉も理解できているからこそ、ゆいちゃんは一人で激しく葛藤し、戦っていました。 病気が「自分を守る盾」や「心を支える杖」のように機能している場合、それを手放す恐怖は計り知れません。
しかし、その「怖い気持ち」や「揺れ動く思い」を丸ごと抱えたまま病院へ向かうことは、回復に向けたとても大きな一歩です。
次回は、いよいよ病院での診察の様子をお届けします。
お楽しみに。
またお会いしましょう。

