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【困っタコラム 第4話】運動がやめられない?!~頑張りすぎの正体~
こんにちは。
初めての方も、おなじみの方も、読んでくださってありがとうございます。
“困っタコラム”始まります。前回は、家庭での食事をめぐる親子のぶつかり合いが、実は病気(困っタコ)に翻弄されているからだというお話でした。
【第3話】こうなったのは誰のせい
【第2話】痩せているのに太って見える?
【第1話】困っタコって、何者?!今回は、学校の部活動についてお届けします。
それでは、第4話です。どうぞ!
運動がやめられない?!~頑張りすぎの正体~
――― 部活後の体育館。さらに個人練習をする、ゆいの姿が ―――
ゆいもっと走り込まなきゃ。もっとシュートの精度を上げなきゃ。
痩せたらもっと早く走れるはず・・・。太らないようにしないと。部活終わりに余計なもの食べたら最悪だし、部活にも支障が出ちゃうし・・・
バスケ部顧問
跳田先生ゆいさん、もう終わりにしよう。無理すると体がもたないぞ。
ゆいあ、跳田先生。大丈夫です!
まだ動けますし、シュート練習してから上がります。
跳田先生いつも真面目で練習熱心なのは知ってるけど、最近顔色が悪いんだよなぁ。
ふらついているようにも見えるし・・・ちょっと心配だ。
跳田先生ゆいさん、なんだか疲れているように見えるぞ。
保健室の先生も最近、体重減少を気にしてた。
授業中にぼーっとしてたって聞いたけど・・・大丈夫か?
ゆい平気です。
少しでも太ったら動きにくくなるし、先生だって試合で勝ちたいですよね?
私の方がわかってますから!
――― 跳田先生が職員室に戻ると ―――
保健室
草野先生あ、跳田先生、お疲れさまです。
最近、ゆいさんの様子、ちょっと気になりますね。成長曲線の伸びも良くないようですし。私も何度か声をかけたけど、「太るのが嫌」って強く拒否するんです。食事もあまり摂っていないようだし・・・。
跳田先生そうなんですよ、今日も延々と練習していて、やめるように言っても全然聞かないんですよ。
うちの部は試合が近いから、つい見守ってしまうけど、さすがに心配になってきました。草野先生私たちだけで抱え込むのは難しそうですね。
摂食障がい治療支援コーディネーターに相談できるって聞いたことがありますよ。一度、話してみませんか?
跳田先生いいですね、どう対応したらよいか、聞いてみましょう。
――― 相談窓口に電話をかける ―――
草野先生はじめまして、福々高校 養護教諭の草野と申します。
実は、心配な生徒がいまして。
部活の練習が終わってもずっと走り込みを続けて、食事もあまり摂っていないようなんです。
本人は「太りたくない」という強い気持ちがあるようで、周囲が何を言っても聞き入れず・・・。身体測定の結果も、成長曲線の伸びが良くありません。
摂食障がい治療支援コーディネーター先生も心配ですね。
実際に、摂食障がいでは、過度な運動でカロリーを消費しようとする行動がよく見られます。「頑張りすぎ」「やめられない」などといった行動を過活動といいます。
太る恐怖が大きいために、自分を追い込みすぎてしまうんです。草野先生過活動・・・
ゆいさんも自分を追い込んでいたんですね。
コーディネーター周囲が心配するほど、ゆいさんは「もっと痩せなきゃ動きにくくなる」とか「太ったら価値がない」といった思いに支配されているのかもしれません。
これは、ゆいさんが「性格的におかしい」とか「わがまま」なのではなく、“困っタコ”が強く働きかけている状態と考えられます。
草野先生困っタコ!ホームページで読みました。
コーディネーターそれに、摂食障がいは、食事や体重の問題だけでなく、完璧主義や強迫的な傾向が関係していることも多いんです。
「もっとやらなきゃ」「ちゃんとしなきゃ」という思いが強くて、たとえば運動も「やめたくてもやめられない」。手を抜いたりサボったりすると、自分を責めてしまったり、ひどい罪悪感を感じてしまう子もいます。
それだけ追い詰められている状態なんですね。草野先生なるほど。
本人は「努力しているだけ」って思っていても、実は「やめられない」こと自体がサインになっているのかもしれませんね。コーディネーター★ 声かけのポイント ★
・まず感情に寄り添う
「最近、疲れてない?」「何か心配ごとはある?」
・命令ではなく、心配している気持ちを伝える
「たくさん走ってるから、体が苦しくなってないか心配だよ」・困っタコの存在に触れる
「もしかして困っタコのせいで、太るのがすごく怖く感じるのかもね」・理解したいという姿勢を見せる
「部活をがんばってるのは伝わってる。一緒に何かできないか考えたいな。」草野先生困っタコではなく、本人の気持ちを聞くことが大切なんですね。
第4話、いかがでしたか?
一見“頑張り屋さん”に見える子でも、過活動が困っタコのサインであることがあります。
摂食障がいは「食べない」だけではなく、「休めない」「やめられない」などの行動で現れることもあります。周囲の人が困っタコという病気の存在を意識することで、「誰かを責める」から「一緒に向き合う」姿勢へと変えることができます。
次回は、「楽しく食べるを取り戻す」について取り上げたいと思います。
お楽しみに。
またお会いしましょう。 -
福井県民公開講座#02「摂食障がいを知る」を開催しました
2025年3月13日、福井県生活学習館ユー・アイふくいにて福井県民公開講座を開催しました。このイベントは、昨年度に引き続き2回目の開催となります。
今回のテーマは「摂食障がいを知る―さまざまなタイプをご存じですか?―」でした。
当日は、63名の方にご来場いただき、誠にありがとうございました。半数が当事者の方やご家族、もう半数が学校や病院など支援者の方という構成でした。初めてご参加の方も多くいらっしゃって、終始真剣に耳を傾けてくださいました。
プログラム
さまざまな摂食障がい
福井大学医学部附属病院神経科精神科 助教 眞田 陸治療の種類
福井大学医学部附属病院神経科精神科 助教 幅田 加以瑛周囲の関わり方
福井大学医学部附属病院神経科精神科 公認心理師 牧野 拓也本講座は、まず、私たちのキャラクター“困っタコ”を交えて摂食障がいの基本的な知識から始まり、神経性やせ症(AN)、回避・制限性食物摂取症(ARFID)、神経性過食症(BN)、過食性障害(BED)といった、さまざまなタイプを紹介しました。タイプごとの特徴だけでなく、その後の経過や、併存しやすい精神疾患など患者さんを取り巻く状況についても解説しました。
次に、「治療の種類」として入院と外来の2つを挙げ、その目的と選択を紹介しました。ここでポイントとなるのがRefeeding症候群であり、身体に及ぼす影響を明らかにしながら入院の必要性について解説しました。また、健康的な食事のとり方としてRAVESモデルを紹介しました。
最後に、心理学の面から、摂食障がいは恐怖の病態と捉えることで、家族の巻き込まれが起こることを紹介しました。「周囲の関わり方」として、恐怖によって引き起こされる問題や、恐怖をどう扱えばよいかを解説しました。
ご参加いただいた皆さま、ありがとうございました。
“楽しく食べる”を取り戻す。
ともに回復を目指しましょう。
講座概要
次回のイベント
決まり次第ホームページにてご案内いたします。
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